空振りセラピスト
脳血管疾患の対象者様に対してリハビリを行うときに一見しっかりしているようにみえるけど、なかなか自発的な動きや発言がない、リハビリが進まないと感じたことがありました。
リハビリの場面では起きているけど、病棟ではずっと寝ているなどの様子が観察されました。
リハビリが進まない原因は、全然頭が起きていなかった、リハビリで求めるレベルが高すぎたことでした。
精神機能の理解がうまくできていれば対象者に合わせたリハビリを提供できると思いました。
認知機能の評価
認知機能の評価は「神経心理ピラミッド」と呼ばれる図で評価するとわかりやすいと感じました。
「神経心理ピラミッド」は
- 認知機能には7階層があり、その働きには順番がある
- 下の4階層は認知の基礎レベル
- 上の3階層は認知の高次レベル
で構成されています。
基礎レベルの機能
基礎レベルは下から順に
- 覚醒・警戒態勢・心的エネルギー、(神経疲労)
- 抑制・発動性(抑制困難症・無気力症)
- 注意力と集中力
- コミュニケーションと情報処理、スピード・正確性
で構成されています。
空振りセラピスト
私が評価を間違えたのは覚醒・警戒態勢・心的エネルギー、(神経疲労)でした。
リハビリ中はしっかり覚醒してリハビリをしてくれていると感じていました。
実際は、病棟では疲れて寝ていたので「神経疲労」が起こっていました。
JCSも病棟での生活では2桁レベルと考えます。
覚醒・警戒態勢・心的エネルギー
この3つは行動や思考の土台で、最も基礎的な脳の働きです。
神経疲労
神経疲労とは
脳が損傷した細胞を補うために引き起こされる神経の疲労。以前に比べ余計にエネルギーが必要となります。
脳が今までより疲れやすくなるので、自分たちと同じように情報がうまく処理できなくなります。
神経疲労の日常生活への影響
日常生活では、怒りやすい、自分から行動できない、注意を向けにくい、集中して作業がしにくい、自分の行動がモニターしにくいなどがあります。
リハビリの際に気をつけること
神経疲労がある段階では、動作の練習をしてもすぐに疲労したり、自分のモニターが行いにくく気づきが感じられないことが多いと思います。
そのため、作業の負担が大きく対象者が疲労してうまくリハビリに集中できない可能性があります。
まず最初の目標は
・単純作業に耐えられる時間を増やす
・日常生活場面で起きている時間が長く続く
ことが大切だと考えます。
リハビリの工夫は
対象者の興味がある作業を行う
精神的に楽な繰り返しの作業を行う
1つの作業に集中してもらう
静かな場所で行う
対象者が自発的に行うことを優先する
対象者が様々なことに気づけるよう待つ
対象者に余裕が出てきたら、笑顔が見られたり、普段気が付かないことに気がついてくると考えます。
少し余裕が出てきたら簡単なことから現実検討を促し、生活での気づきを高めるなどの工夫が対象者に合わせたリハビリを行う上で大切だと感じました。
参考文献
前頭葉機能不全 その先の戦略 立神 正洋